要約練習をすると、「書く力」だけでなく、読解力などの国語の力が向上します。
はじめはうまくいかなくてもいいですから、とにかく挑戦してみましょう。
ではお手元に『10分で読める名作 5年生』と原稿用紙または作文ノートを用意してはじめましょう。
『一ふさのぶどう』の要約
『一ふさのぶどう』はどんなお話でしょうか。
まずはざっくりと考えます。
今回は、一行要約からスタートしてみましょう。
一行要約
「ぼく」がジムの絵の具を盗んでしまうが、大好きな先生のおかげで、ジムと仲直りできた。
これで『一ふさのぶどう』の一行要約ができましたが、もちろん不完全です。
つぎに、物語の構成を考えましょう。
この物語の構成
この物語は、大半を「ぼく」の「小さいとき」の回想にあてています。
そして物語の最後の7行で時間が大きく進んで、おそらく現在の「ぼく」の想いが述べられています。
長々と過去が語られて、物語の最後に現在にもどるというこのような展開を「回想型」とここでは呼ぶことにいたしましょう。
「回想型」で筆者が伝えたいこと
「回想型」の物語では、最後の現在が語られる部分に筆者の伝えたいメッセージが込められている場合が多くあります。
『一ふさのぶどう』も同じです。
ということで、最後の7行の部分を一行要約にまとめてみましょう。
この部分の一行要約をこれまで多くの生徒にやってもらいましたが、ほとんどの小学生が次のように書いてきます。
一行要約
ぼくの大好きだったあの先生はどこにいったのだろう、大理石のような白い美しい手はどこにも見つからない。
問題は「大理石のような白い美しい手」です。
結論から言うと、「大理石のような白い美しい手」は「たとえ」です。
特に中学受験をする人はよく覚えておいてほしいのですが、国語の記述式問題を解くときに、本文中のたとえを解答欄でまとめたり説明したりするときは、
「たとえ」は具体的表現に言い換える
というきまりがあります。
では、この「大理石のような白い美しい手」はどのように言い換えればよいでしょうか。とりあえずは、
「ぼくの大好きな先生」
でかまいません。
一行要約
ぼくの大好きだった先生はどこにいったのだろう、ぼくの大好きだった先生はどこにも見つからない。
言葉がかぶっていますので、直します。
一行要約
ぼくの大好きだった先生はどこにも見つからない。
ここで、もうワンランク上を目指す人はこれで満足しないでください。
「大理石のような白い美しい手」
は、本当に先生そのものを指しているのでしょうか。
詳しく解説すると長くなってしまいますので、結論だけ言いますと、
「大理石のような白い美しい手」
は
「大好きだった先生のような存在」
と読み取ることができます。
少し言葉がちがうだけですが、大きなちがいです。
一行要約
ぼくの大好きだった先生のような存在は、どこにも見つからない。
かなり良くなりました。
では、はじめに作った一行要約と合わせてみましょう。
一行要約を合わせる
「ぼく」がジムの絵の具を盗んでしまうが、大好きな先生のおかげで、ジムと仲直りできた。ぼくの大好きだった先生のような存在は、どこにも見つからない。
これを土台にしてもいいし、ここからいったん離れて、自分なりに要約を作っていくのもよいでしょう。
一行要約は、物語の本題を外さないために行う作業です。
便利な技ではありますが、絶対的なものではありません。
今回は、原稿用紙1枚以内を目指して要約を書いてみましょう。
いきなり要約が難しいという人は、『要約ワークシート』を使ってみてください。
『一ふさのぶどう』要約ワークシート
『一ふさのぶどう』要約ワークシートの記入例
お手本
要約が書けたら、次にお手本を写してみてください。
このお手本は231字です。
注)このお手本には「あの」が書かれてしまっています。あってもよいのですが、「指示語はなるべく使わないという習慣をつけた方がいい」と思います。後ほど修正します。
なぜ仕上げにお手本を写すのか
「お手本を写す」という活動によって、文章力と国語力が高まります。
かの文豪志賀直哉が、父親の書斎の本を手書きで写したというエピソードはとても有名です。
志賀直哉を目指す必要はありませんが、皆さんもお「手本を写す」という活動を通じて、力をつけてください。
また、せっかく自分で要約を書いたのですから、自分の書いた要約と、お手本を比べることでいろいろな学びが生まれます。
実際に書き写すことで、読むだけでは感じることができない違いを体感し、次はもっと上手に要約を書こうという気持ちにつながります。