第2回は、壬生忠岑(みぶのただみね)の和歌です。

有明の つれなく見えし 別れより 暁ばかり うきものはなし

読み方「ありあけの つれなくみえし わかれより あかつきばかり うきものはなし」

意味「月が空に残っているうちに夜明けになったあの日、別れ際のあなたの態度は、つれないものに見えました。それ以来というもの、あかつき時ほどつらいものはありません。」

恋愛の歌がとても多いのです

 百人一首の中に、恋愛の歌はなんと43首もあります。

 みなさん、覚えておいてください。日本文学から恋愛を取りのぞくことは

カツ丼からカツを抜くようなものです。

それはもはやただの卵丼でしかありません。

それはそれで、ちょっとおいしいかもしれませんが。想像してみてください。

 豚カツ屋さんに行って、

「カツ丼のカツ抜きください」

と言ったら、たぶん店員さんに頭おかしいとおもれちゃいますよね。

 日本文学にとって、恋愛とはカツ丼のカツです。

 抜いてはだめなものなのです。

平安貴族さんの恋愛はとても変わっている

 平安時代の貴族のみなさんの恋愛事情はとても変わっていて、現代人の私たちの感覚からすると、理解不能なことがとても多いのです。

こんなに違う現代日本人と平安貴族

 この表を見ていかがでしょう。

 ちょっと現代の私たちからは、よく分からないことも多いですね。

 ここでは、これについて細かくあれこれ考えるよりも

「ふーん、こんなに違うのか」

 程度の理解で大丈夫です。

 このあたりのことをよく知りたい人は『あさきゆめみし』という漫画がオススメです。『源氏物語』の漫画版です。

 また、NHKでとても面白いドラマが放映されています。こちらもオススメです。

有明の月ってなに?

「ありあけのつき」と読みます。

「夜が明けて、明るくなってきたのに、まだ西の空に残っている月」のことです。

 平安貴族のデートは夜です。

 お姫様のお屋敷に男性が通ってきますが、朝になると男は帰ります。

 その別れ際で、「また来るね」「次会うのが楽しみだね」とか言ってくれたらいいのに、

 なんだかそっけない態度で「じゃあな」みたいな感じで去っていかれたら、すごくすごく気になりますよね。

「え、なんか私、悪いことした?」

「私のこと、きらいになった?」

と思い始め、そわそわ落ち着かない気分になったり、すごく落ち込んだりしてしまいます。

 そのやるせない気持ちを詠んだ歌が、

有明のつれなく見えし別れより暁ばかりうきものはなし

 なのです。

お姫様は「朝まで起きてるのかよ」

と思う人もいるでしょう。

 平安時代のお姫様は、学校もないし、お仕事も行きません。その代わりお屋敷から自由に外に行くこともできません。

 平安時代のお姫様にとって大切なことは、できるだけ身分の高い男性貴族と結婚することです。そのためには、たくさんの教養を身につける必要があります。『古今和歌集』の中身を何も見ずにすらすら言えるくらいでないとだめです。なにしろ、

「男性とやりとりする和歌」

が相手の男性に「いいなあ」と思ってもらえるようでないと、興味を持ってもらえません。いい和歌を詠むためには、和歌をたくさん勉強して、たくさん作る練習をしないといけません。

 そして、どんな身分の男性と結婚できるかによって、自分の家族や屋敷で働く世話係の人たちの運命も変わってしまいます。

 朝まで起きている自由はありますが、お姫様は大変なのです。

豆知識

 お話の最後に、ちょっと言葉の豆知識です。

「あかつき」太陽の登る前の、ほの暗いころ。東の空にうっすらと青みがさすころ。

「しののめ」夜が明ける前に、東の空が明るくなってきたころ。

「あけぼの」夜の明けはじめ。

 すべて、夜が明ける前の表現です。

 「あかつき」→「しののめ」→「あけぼの」→「日の出」

という感じです。はっきりとした切れ目はありませんが、こんな言い方もあるのですね。

覚えなくても大丈夫ですが、知っておいて損はありません。

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