百人一首は、今からおよそ1000年前に藤原定家(ふじわらのていか)という人が作りました。

 すぐれた和歌を100集めたものです。

 やがて、これが「かるた遊び」になって、現代にのこっています。

 この記事では、百人一首の歌を小学校4~6年生ぐらいの人たちでも分かるように、紹介してゆきます。

 それでは記念すべき第1回、いってみましょう。

柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)

 昔の人です。660年から720年まで生きた人ですから、百人一首が作られた時から、さらに400年ほど昔の人ですね。

今からだと1300年も昔ということになります。

 柿本人麻呂(かきのもとのひとまろ)の歌は、『万葉集(まんようしゅう)』という歌集にたくさん収められていて、昔から和歌を詠む人にとっては神様のような存在です。

 ですから、柿本人麻呂のことを「歌聖(かせい)」と言ってたたえる人もたくさんいました。

 百人一首には、次の歌が収められています。

あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む

読み方「あしびきの やまどりのおの しだりおの ながながしよを ひとりかもねん」

むかしの言葉で「む」と書いてあったら「ん」と読んでください。

「枕詞(まくらことば)」って何?

「あしびきの」「山」につながる「枕詞(まくらことば)」になっています。

「枕詞」というのは、その言葉がきっかけとなって次の言葉を連想させるはたらきをしています。

 たとえば、

「さいしょはグー!」

と聞いたら、ほとんどの人は「じゃんけんポン!」を連想しますよね。

 同じように、「あしびきの」と聞いたら、昔の人は「山」が頭にうかびました。

 他にも「枕詞」の組み合わせには次のようなものがあります。

「ひさかたの」→「光」

「たらちねの」→「母」

「ちはやぶる」→「神」

などです。そして、「枕詞」は、歌のリズムを整えるという大切な役目がありますが、言葉自体の意味は考えなくてよいのです。

「さいしょはグー!」もリズムを整える役目がありますが、大切なのは、そのあとのじゃんけんの勝負ですよね。

百人一首では、この歌以外にも「枕詞」の出てくる歌がありますので、そのときはまた改めて説明します。

この歌の意味

 さて、もう一度歌を見てみましょう。

あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の ながながし夜を ひとりかも寝む

「あしびきの」はリズムを整えるだけなので、特に意味は考えません。

 では、「山鳥の尾のしだり尾の」はどういう意味でしょうか。

「山鳥のしっぽがたれさがっている」

という意味です。

「ながながし夜をひとりかも寝む」

「長い長い夜をひとりぼっちで寝るのかなあ」

という意味です。

 この歌は、簡単に言うと

「長い夜を一人ぼっちで寝るのか(さびしいな)」

という意味になります。

 なんだ、それだけの意味かよ。それのどこが名作なんだ?と思う人もいるでしょう。

 しかし、藤原定家は、たくさんある柿本人麻呂の歌の中からこの歌を選びました。それはやはり、この歌がすばらしいと藤原定家が考えたからなのです。

 ではこの歌のどこがすばらしいのか考えてみましょう。

「あしびきの」の歌が名作とされるわけ

 結論を先に言えば、雰囲気の作り方が優れています。

「長い夜をひとりで寝るのか」と言っているだけのこの歌ですが。

 もし、この歌が

「ながながし夜をひとりかも寝む」

だけだったら。読み手としては

「あ、そう。だから?」

と思うだけでおしまいでしょう。

これに、「山鳥の尾のしだり尾の」をくっつけるとどうなるでしょうか。

「山鳥の尾のしだり尾の ながながし夜をひとりかも寝む」

意味:「山鳥の垂れ下がった尾のように長い夜を私は一人で寝るのか」

 となってきます。全然違いますね。

 なぜ全然違うように感じるのかというと、ポイントは「山鳥」です。

 この人は、自分がどこで寝ているのかをはっきりと言っていません。しかし、読む人は「山鳥」という字を目にして、山の奥の林の中にぽつんとたたずむしっぽの長い鳥を想像します。

「もしかして、山の中で一人で寝ようとしているの?だったらすごく心細いよね。」

という想像が広がっていくのです。

 これが、この歌のかもし出す「なんともいえないさびしさ」「心細さ」の正体です。

 そして、「あしびきの」という「枕詞」で調子を整えて完成です。

 えてして名人芸は、やっていることは簡単そうに見えるのですが、実は真似しようとするとなかなかできないというものが多いのですが、柿本人麻呂のこの歌はその典型的なものです。

 何度も声に出して読んで、味わってみてください。

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