和歌と読み方
いにしへの 奈良の都の 八重桜
けふ九重に 匂いぬるかな
けふ九重に 匂いぬるかな
いにしえの ならのみやこの やえざくら きょうここのえに においぬるかな
歌の意味
昔の奈良の都に咲いた八重桜が、今日はこの宮中に美しく咲いています。
ある日、奈良の八重桜が宮中に献上されました。
その受け取り役をした伊勢大輔が、「歌を詠め」と言われて、その場で詠んだ歌だそうです。
その場で詠んだ歌が、あまりに素晴らしかったので、周りにいた人たちはとても感心し、感動したそうです。
対 比
「いにしへ(むかし)」と「けふ(今日)」
「八重」と「九重」
「九重」には「皇居」の意味と「たくさん」の意味があります。
このときの皇居は京都なので、「いにしへの都=奈良」と「けふの都=京都」の対比もかくれています。
伊勢大輔
「いせのおおすけ」「いせのたいふ」と読みます。
紫式部と同じ職場の後輩です。
どういう職場かというと、藤原彰子(ふじわらのしょうし)という日本史上ナンバーワンと言ってもいいお姫様にお仕えして、身の回りのお世話をする職場です。
藤原彰子は、天皇の子を生み、皇后さまになります。
この藤原彰子がかかえていた女房(世話係)がすごい人ばかりです。
和泉式部(いずみしきぶ)=この時代の代表的歌人
紫式部(むらさきしきぶ)=源氏物語の作者
赤染衛門(あかぞめえもん)=栄花物語の作者
大弐三位(だいにのさんみ)=紫式部の娘で歌人
こんなすごい人たちの職場にいた伊勢大輔もすばらしい歌詠みで、勅撰和歌集には51首の歌が選ばれています。