はげしかれとは 祈らぬものを
歌の意味
「はげしかれとは祈らぬものを」
意味は「はげしくなってくれと祈ったのではないのに」です。
初瀬山のお寺の観音様に、ある女の人がお祈りしました。
自分が思いを寄せる「あの人」が自分を想ってくれるようにお祈りしたのです。
しかし、実際には恋はかないません
「初瀬の山から吹いてくる山おろし」
のように、相手の態度はますます「冷たいもの」に感じられてしまいます。
祈りが叶わなずに恋心だけがつのってゆく心が描かれています。
もちろん、作者の俊頼の心情を詠んだものではありません。
「祈れども逢わざる恋」という題に合わせて詠んだ歌です。
ところで、この歌の作者の源俊頼は超有名な歌人ですので、その業績を紹介します。
源俊頼
有名な本
『俊頼髄脳』という歌論書を書いています。
もともとは俊頼が自分の子供のために書いた、和歌の教科書のような本でした。
しかし、内容が素晴らしいものでした。
「普通ではなかなか思いつかないような発想をつなげて、華やかに歌を作るのがよい」
という、当時としては新しい考え方を和歌に取り入れて、後の時代にも影響を与えました。
金葉和歌集
そして、源俊頼といえば『金葉和歌集(きんようわかしゅう)』の編纂者(へんさんしゃ)です。
略して『金葉集』とも言います。
編纂者というのは、分かりやすく言うと編集長みたいなものです。
この和歌集の責任者です。
しかも、『金葉和歌集』は勅撰和歌集といって、天皇の命(勅命〔ちょくめい〕)によって作られる和歌集です。
言ってみれば国家事業です。
『金葉和歌集』は、5番目の勅撰和歌集です。
その責任者に指名された源俊頼はすごい人だったのですね。