『論語と算盤(ろんごとそろばん)』第2章のはじまりです。

著者の渋沢栄一さんは、はじめ大蔵省(おおくらしょう・現在の財務省)で役人をしていました。

大蔵省(おおくらしょう)といえば、エリートの中でもトップクラスです。

しかし、第1章でも見てきたように、渋沢栄一さんは大蔵省を飛び出して、実業家(じつぎょうか)の道を歩みます。

⇒役人をやめて実業家になろうとする渋沢さんを親友が止めようとした話【第1章 処世と信条 その3】

 

そんな渋沢栄一さんですが、役人として働いていたころから、日本の教育のあり方に問題があると考えていたようです。

第2章のタイトルは「立志と学問(りっしとがくもん)です。

渋沢栄一さんが、教育と学問についてどんなことを考えていたのか、見ていきましょう。

 

※立志(りっし)=目標をかかげて、それをなしとげようと決意すること。

〈最初の問題〉

明治維新(めいじいしん)のすぐあとのころの話だぞ

渋沢栄一
大蔵省(おおくらしょう)の役人になりはしたが・・・・・・
日本には科学的な学問がほとんどないなあ。
これでは西洋の国々と交流できないぞ。
渋沢さんの考え
ダメポイントその1・一般の教育レベルが低い
ダメポイントその2・教育といえば政治教育(せいじきょういく)
ダメポイントその3・経済活動を支えるための知恵や学問もない
【武士や金持ちの町人】
●『論語』などの中国の古典を中心に学ぶ。(道徳や政治の内容が多い)
●体を鍛え、武士的な精神を育てる。
⇒それなりに高い教育を受け、精神も鍛えられた。
【一般の百姓・町人】
●寺子屋で読み書きそろばんの基礎を習う。
⇒分かりやすいが、「おけいこ」レベルでしかない。

明治の人
商人に高い知識や、むずかしい学問などいらんにゃ~

渋沢栄一
西洋の国々とまともに付き合うには
科学的知識はぜったいに必要だ!

〈新たな問題発生……(科学的教育をがんばった結果)〉

時は流れて、明治の終わりごろ!

良かったっすね~。
やっと日本も外国に負けないくらい物質文明が進歩してきた感じですよ。

栄一カエル
いやいや、まだまだ問題が山のようにあるよ。
たしかに、文明が進歩して、みんなが豊かになったが、物質的な豊さだけだ。
世の中を見わたすと、武士道とか、世の中の道徳というものがなくなっている。
精神教育がなくなってしまったのだ。
富(とみ)はできたが武士道、道徳がなくなった。
【どういうことか】
明治時代の日本は、教育に科学を取り入れて、たしかに物質面ではものすごい発展をして、一気に世界に認められる国になりました。
しかし、それと引きかえに、精神面での「武士道」「道徳」といったものが見られなくなります。
本当の豊かさにとって、「物質面」「精神面」とは、そのどちらも大切なものです。
そうしないと、お金もうけのために道徳を踏みにじるような「悪い金持ち」がどんどん世の中にはびこることになってしまいます。

悪い金持ち
これからはわれわれの時代だにゃ~!
お金のためならなんでもするにゃ~!

栄一カエル
人格がどこかへ行ってしまった。
明治維新の前より退化して、すでに武士道も道徳も消えてしまった!

あわわ……
どうしましょう?

栄一カエル
はやりわたしは「論語」を大切にする!
そして、わたしは今を大事にするので、天国も地獄も気にしない。
今、この瞬間に正しいことを行う人が、人として立派なのだと信じてやっていく。
(その2へつづく)
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