和歌と読み方
春過ぎて 夏来にけらし 白妙の
衣干すてふ 天の香具山

 

はるすぎて なつきにけらし しろたえの ころもほすてふ あまのかぐやま

 

和歌の意味

春が過ぎて夏が来たようです。夏になると「真っ白な衣を干す」という天の香具山に。

来にけらし

来たようだ。「らし」が「~のようだ」

白妙

「白い色」という意味の他に、枕詞(まくらことば)としての働きもある。「衣」「袖」「ひも」などの布に関する言葉、「雲」「雪」などの天体に関する言葉などにかかる。

 干すてふ

「干すという」「干すそうだ」。「てふ」が「という」の意味を持つ。

 

歌の心

夏がきたことをさわやかに詠んだ歌です。夏山の青と衣の白という色彩が美しいですね。

少し考えてみればわかることですが、春から夏のあいだには梅雨があります。

雨が降り続いてじめじめした季節が過ぎて、やっと梅雨が明けました。

すると、晴れた空の下、山のふもとに真っ白な衣が干されています。

 

しかし京都からは見えません

この歌を詠んだ持統天皇は、藤原京にいました。

藤原京奈良県橿原市にあり、天の香具山奈良県橿原市にあります。

つまり、持統天皇にとって、天の香具山いつも見ている風景の一部です。

ですから、万葉集に収録されているこの歌は

春過ぎて夏来たるらし白妙の衣干したり天の香具山

という目の前にある景色を直接描写する形になっています。

これに対して、百人一首では

夏来たるらし→夏来にけらし

「夏が来たらしい」→「夏が来るらしい」

衣干したり→衣干すてふ

「衣が干してある」→「衣を干すそうです」

と微妙に言葉を変えてきています。

 

この変更を行ったのは、百人一首を作った藤原定家です。

もちろん住んでいる場所は京都です

藤原定家の時代は、都が奈良から京都に変わって、すでに千年以上たっていました。

千年前に天の香具山あたりで行われていた夏の風習をなつかしむ気持ちをこめて、

「夏がくるらしい」「衣を干すそうです」のような形にした方が、

当時の京都の人たちにはしっくりきたのでしょう。

 

持統天皇

持統天皇は第41第天皇です。

天智天皇の娘で、天武天皇の皇后です。

親戚家族が天皇だらけですね。

天武天皇が崩御した後、即位します。女性が天皇になるときは、後継者争いを防止する意味があります。

持統天皇は、天皇の後継ぎ争いで家族が対決という、きつい戦いを経験しています。(壬申の乱・じんしんのらん)

だから、後継者争いを避けるために、天武天皇が崩御した後は、自分が天皇となりました。

ところが、後継者候補であった皇子が相次いで死んでしまいます。

そんなこんなで、即位して7年後、ようやく孫の文武天皇に譲位して一件落着となりました。

 

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