君がため 惜しからざりし 命さへ 永くもがなと 思ひけるかな
読み方「きみがため おしからざりし いのちさえ ながくもがなと おもいけるかな」
君に会うためならば惜しくないこの命ですが、こうしてお逢いできたあとになると、長く生きたいものだと思うのです。
「詞書(ことばがき)」に書かれていること
「詞書(ことばがき)」
その和歌が詠まれた事情を説明する短い文。
歌の前につけられる。
この和歌の詞書(ことばがき)に「女のもとより帰りてつかはしける」とあります。
「女の家から帰ってきたあと、使いの者に持たせて送った歌」
という意味です。
つまり、その女の人が大好きで大好きで、会う前はこう思ってます。
「君に会えるなら命なんておしくない!」
そして、会った後に家に帰ってきたらこう思うのです。
「(また君に会うために)長生きしなきゃな!」
こうした、恋に落ちた男の心の動きを素直に詠みあげた歌です。
藤原義孝(ふじわらのよしたか)という人
そんな藤原義孝ですが、
ものすごいイケメン
だったそうです。
しかし、「長くもがなと思ひけるかな」と詠んだ義孝さんは、何と21歳の若さで病気で亡くなってしまいます。
子供には、男子が1人いました。
藤原行成(ふじわらのゆきなり)です。
藤原行成は、「三蹟」と言って、字が美しい人ベスト3に入っていた人で、後一条天皇の教育係だった人です。
しかし、和歌はお父さんのように得意ではなく、むしろ苦手でした。だから、百人一首にも藤原行成の歌は入っておりません。